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半分こ
- Momoyo
- 2019年10月20日
- 読了時間: 2分
とても寒い夜だった。
まだ秋なのかもしれないけれど
今日は、冬だ、と感じる夜だった。
冬になって思い出すのは、
寒い多摩川べりの朝。
暖かいフリースなんて
生まれてなかった頃、
ダウンジャケットは
たしか少しだけ出始めていた
80年代の頃。
(違ったらごめん)
あったとしてもまだ持っていなくて、
ただジャージを着た高校生だった私たち。
ジャージに薄いブレーカーで、
部活のあと多摩川べりで凍えていた。
風が、びゅうびゅう吹いていた。
土手に、なぜか、カップヌードルの
自動販売機があった。
ちゃんとお湯を注いでくれる
自販機。
なぜ土手にあるのか?
今、考えると驚く。
オランダの田んぼの
あぜ道にあった、
揚げたてのエビコロッケの
自販機ぐらい、驚く。
でも風が吹く場所>寒い>暖かい食べ物
そう思いつく賢い人が
世界中どこにでも
いるのでしょう。
そして、友達のKちゃんの
ジャージのポケットの百円と
私のジャージのポケットの五十円で、
一杯のカップヌードルを買うことができた。
(貧しい)
もちろん一膳しか付いて来ない、
湿気った割り箸をパキと割って、
二人で半分こした
そのカップヌードルの味を、
三十五年たって
まだ思い出すとは。
半分のカップヌードルは
本当に少ないのに、
それなら食べなくても
いいんじゃないかというぐらい
お腹の足しに
ならなそうなのに。
手で持つのが熱すぎるくらいの
その発泡スチロールのカップの熱さと、
まっすぐ立っていられないぐらいの
あの土手の寒風の強さが、
ブリュッセルで
木枯らしに吹かれたとき、
今なお、蘇って来る。
あったかくて嬉しかった、
半分こして楽しかった、
百五十円で手に入れることができた
冬の幸福の風景。