CD製作中。
- Momoyo
- 2018年4月22日
- 読了時間: 5分
3月以来、ブログの書きかけの文章がいくつもの死骸のようにブログ下書きファイルに横たわっているのを横目で見つつ、全く新しい文章を書きます。
受難節に書き始めた文章の内容は、復活祭を超えてしまうと共感できる内容として書き続けるのが難しい気がするからです。
さらに今年はイースターのミサなどのお仕事が全て終わった直後に、室内楽のグループ「フィリエ」のレコーディングにすぐ入り、そのあとはイースター休暇だったので、4月1日の前と後では全く世界が転換してしまったかのような心機一転感があります。
みなさんの春も劇的な転換があったでしょうか。
今回の「フィリエ」の録音は、クープランのヴォーカル作品を、私は4人のうちの一人のチェンバロ奏者として(また、クープランのオルガン・ミサから数曲、大オルガンでの演奏も録りました)、二人のソプラノ・エリザベスとタチアナ、ガンバとリコーダーのローラの4人で、三日間合宿して暮らしながら無事に録る事ができたので、一人でオルガンを弾くだけの時に比べて、
感謝感
という言葉があったなら、
感謝感、が本当に半端なくありました。
たとえ、何度も一緒に演奏会を弾いたことがあり、毎週のように練習やメールのやり取りをしあっている仲間であったとしても、その一つ一つは人生の凝縮された数時間のこと。毎日一緒に暮らしてみて、隠されている難しい気性とかが出てくるときがあるのではないか、夜になってしまうことが避けられない演奏の際に、歌の人は機嫌が悪くなって良い演奏ができなくなってしまうことがあるのではないか、果てには疲れの相乗効果で(?)全く楽しめなくなってしまうのではないか。。。
そうした、グループの危機が訪れたとしても、きちんと受け止めようと心の準備をしていました。
ところが修道院生活の規則正しさと(ミサなどがあるたびにチェンバロもマイクも全て片付けて、再び1センチもずれないように全く同じに設置し直すということを一日に多い日で3回もしなければならなかったけれども)静かな空気、食事時間などのリズムのおかげもあり、わがままを言い出す人もおらず、毎日最高の体当たりをして、演奏に臨んでくれました。しかも録音技師の家族も(アナと旦那様と1歳の赤ちゃん)も健康を守られて、夫のグザヴィエも音楽ディレクターとして全ての譜面を網羅し、指示出しを朝まで毎日頑張ってくれて、無事に全部の収録が終わりました。
この、全ては、私が言い出しっぺだったのでした。
こうして振り返った時に、
「よく、みんなやってくれたなあ!」
と信じられないような気分にならざるを得ません。
この録音に先立って、ベルギーで2回のコンサートでクープランの2声のためのLeçons de Ténèbresを演奏会で歌い(難曲なので)とうとう本番にこぎつけたなあ!と感慨に浸っていたら、どちらの演奏会も満員で、よく単発のコンサートでこんなに人が入ってくれたと感涙にむせび(おおげさでなく!)、そのまま全員体調を崩すこともなく録音に突入し、全員が修道院に勢ぞろいした日に、ビルダーのトマくんがオルガンの調律をしてくれていた時、よくぞこの全ての登場人物のみんなが実際に集まってくれたなあと心が熱くなったので、
やはり、
言い出しっぺであり、企画者であると言うことは、
ただ一人の演奏家であるよりも、もっともっとやりがいのあることなんだなあと実感したのでした。今まで味わったことのない、新しい音楽家冥利につきる体験でした。
このような中で、一人の演奏者として、自分もきちんと集中して良い演奏ができたのかどうか?その結果としてのCDのモンタージュに明日入ります。
乞うご期待。
(と締めくくるつもりで書き始めたのではないのですが、とりあえずここまで順調、ということをお知らせさせていただけたら、と思い、あと一つ予告だけさせてもらって今日は終わります)
この夏、このグループ、フィリエで、2週間の日本ツアーに出ます。
日程は、
8月10日(金)紅葉坂教会(神奈川)午後5時より
8月11日(土)くにたち芸小ホール(東京、国立市)午後6時より
8月14日(火)川口教会(大阪)午後7時より
チラシなど詳細は5月にお知らせできると思います。
お近くの方はどうぞ足をお運び下さい!
お会いできるのを楽しみにしています。
(リエージュでの録音最終日、午前3時ごろのショットです)

***************************************
(追記)色白の友人。
高校時代の陸上部の仲間で、専門で走っている距離が違ったので特に親しいというわけではなかった友人が、ブリュッセルに遊びに来てくれて、実はその日に50歳のお誕生日だったことを急に食事の時に言うので、本当に本当にそんな大事な日にここに来てくれたんだ?と思って胸がいっぱいになった。何か記念に贈らせて欲しい、という気持ちになり、昔彼女は化粧品会社に勤めていたこともあって私がとても素敵だなと思って毎日幸せに使っている口紅を一緒にお店に行って見てもらい、好きな色を選んでもらった。ひと月の間中毎日色を変えられるというキャンペーンで30色があったのだけれど友人は62番を選んだ。それは私が持っている67番のすぐ下のPK系の色味で、「ちょっと待って」と比べたら私と彼女は色の白さがほとんど同じなのであった。昔は気づいたこともなかったこと(というか昔はあまりに日焼けをしていた)。その新製品はリップケースが別売りで15種類から選べたのだけれど、彼女が選んだのはなぜか私のと同じのだった。そんなふうに、女友達と同じものが好きに思えて楽しいなと思えたこと、全く違う人生の中で道こそ異なってもなんだか同じ価値のものを求めて生きているようであることについて熱く語り合えたことが、そのリップの中に凝縮されたように感じて、忘れられない4月になったし、自分の50になる日が刻一刻と近づいていることに対しても、彼女の飄々とした姿に勇気をもらいました。